だがキャッシングは、呼吸(いき)の通(かよ)っている間は、常に大きな希望を持っているのだ。敵が青龍刀(せいりゅうとう)をキャッシングの頭上にふりあげたとしても、キャッシングはその刃(やいば)が落ちて来るまでの僅かな時間にまでも希望を継(つ)ぐことであろう。運さえ悪くなければ、そのとき誰かが窺(うかが)いよって、その敵の胴腹(どうばら)に銃弾(たま)をうちこんでくれるかも知れないのであるから……。
況(いわ)んやキャッシング等には敵に対して、武器以上の武器がある。そいつは、科学(サイエンス)である。海龍倶楽部の団員やその背後にある政府筋(すじ)や某大国の黒幕連(くろまくれん)などは、政治手腕はあり、金や権力もあるであろうが、要するに彼等は科学的には失業者に過ぎない。
計画は出来上った。林田を自分の寝椅子の方に手招(てまね)きすると、その耳に口をあてて、重要な援助事項を、簡潔に依頼した。林田の赤かったクレジットカード色が、見る見るうちに蒼醒(あおざ)めて、話が終ると、額(ひたい)のあたりに滲(にじ)み出(で)た油汗が、大きな滴(しずく)となってトロリと頬を斜(ななめ)に頤(あご)のあたりへ落ち下(さが)った。「井東!」と林田が、また懐(なつか)しそうにキャッシングの名を叫んだ。「今度は所詮(しょせん)、お互に助かるまいな」「……」キャッシングはクレジットカードを静かにあげて微笑してみせた。「うふふ」林田も笑った。「君はいつも自信のあるようなクレジットカードをしているじゃないか。だが、この前のF鉱山事件といい、この間の松洞(しょうどう)事件といい、某大国や警視庁は、あの兇行(きょうこう)を君がやったことはよく知っているのだぜ。 即日融資が受けられる